「ただいま」の声が、いつもより小さかった日
ある夕方、長男(小4)がいつもより静かに帰ってきました。
「ただいま」の声が、少し小さかった。
ランドセルを置いて、そのままソファに座った。
何があったか、すぐわかりました。
隣に座って、しばらく何も言わずにいた。
少ししてから「今日、ちょっとうまくいかなかった」とぽつりと言ってきた。
「そっか。でも帰ってきたじゃん」とだけ伝えました。
長男の表情が、少しやわらいだ気がした。
子どもは外でいろんなことを経験しています。
友達との関係、テストの結果、先生とのやりとり。
うまくいかない日は、必ずあります。
そういう日に、家がどんな場所であるかが、
子どもの明日を大きく左右する気がしています。
この記事では、アドラー心理学の「共同体感覚」をヒントに、
「安心できる家庭」がなぜ子どもの支えになるのかを考えます。
子どもが「うまくいかない日」に何を求めているか
解決策より「受け取ってもらえること」
子どもが落ち込んで帰ってきたとき、
親としては「どうすればよかったか」「次はこうしよう」と
アドバイスをしたくなります。
でも、そういう日に子どもが本当に求めているのは、
解決策ではないことがほとんどです。
「今日うまくいかなかった」という気持ちを、
ただ受け取ってもらえること。
「そっか、大変だったね」と、
そのままの状態を受け入れてもらえること。
それだけで、子どもは少しだけ楽になれます。
家が「安心できない場所」だとどうなるか
逆に、家に帰っても安心できない場合はどうでしょうか。
「学校でどうだった?」と根掘り葉掘り聞かれる。
うまくいかなかったことを話したら説教が始まる。
弱音を吐いたら「しっかりしなさい」と言われる。
こういう体験が続くと、子どもは家でも
「失敗した自分」を隠すようになります。
外でも内側でも、ちゃんとしていなければならない。
その緊張が、子どものエネルギーを消耗させていきます。
学校でうまくいかなかった日こそ、
家では「ありのままでいられる」ことが大切です。
アドラー心理学が教える「安心の居場所」の意味
共同体感覚は「受け入れてもらえる」体験で育つ
アドラー心理学の核心概念「共同体感覚」は、
「自分はここにいていい」「どんな状態でも受け入れてもらえる」
という感覚のことです。
この感覚が育つとき、人は外の世界に向かう勇気を持てます。
逆に、この感覚が育っていないとき、
失敗を恐れ、人の目を気にし、
挑戦することを避けるようになりやすい。
家庭という最も身近な共同体で、
「失敗しても帰れる場所がある」という安心感が育つとき、
子どもは外の世界でも少しずつ勇気を出せるようになります。
「おかえり」という言葉の重さ
「おかえり」は、毎日使う短い言葉です。
でもこの一言が、
「あなたが帰ってきたことを、ちゃんと喜んでいる」
「今日どんな一日だったとしても、ここは変わらずあなたの場所だ」
というメッセージを伝えています。
うまくいかなかった日の「おかえり」は、
特別な言葉じゃなくていい。
ただ、そこにいて、帰ってきたことを受け取る。
その「おかえり」が、子どもの支えになります。
「勇気づけ」は失敗した日にこそ必要
アドラーの「勇気づけ」は、
うまくいったときより、うまくいかなかったときにこそ
本当の力を発揮します。
「失敗しても、あなたはここにいていい」
「うまくいかなかったけど、今日も頑張ったね」
「明日があるよ」
これらは評価でも励ましでもなく、
「あなたの存在を、そのまま受け取っている」という
メッセージです。
子どもが一番必要としている瞬間に届く勇気づけは、
失敗した日の「おかえり」の中にあるかもしれません。
3児パパが実感した「安心の居場所」が育てるもの
長男の「ぽつりと話してくれた」夜
冒頭でも書いた、長男がいつもより静かに帰ってきた日のこと。
「そっか。でも帰ってきたじゃん」とだけ伝えて、
あとは隣にいた。
30分くらいたって、長男が少しずつ話し始めました。
友達との間で何かあったようでした。
私はほとんど何も言わず、
「そっか」「うん」「それで?」と聞くだけでした。
最後に長男が「話せてよかった」とひとこと言って、
自分の部屋に戻っていきました。
解決はしていない。アドバイスもしていない。
ただ、そこにいた。それだけでよかったようでした。
長女の「言わなくてもわかってほしい」
長女(小6)は、うまくいかない日に
自分から話してくることはほとんどありません。
ただ、いつもより静かで、ご飯を少し残す。
そういうときに「どうしたの?」と聞くより、
「今日疲れた?ゆっくりしていいよ」と言う方が、
後で話してくれることが多いと気づきました。
「急かさない」「聞かない」「ただそこにいる」
その姿勢が、長女が話しやすい場所をつくっている気がしています。
次女の「おかえりの顔」が教えてくれたこと
次女(小2)は、帰ってきたとき真っ先に私を探します。
「お父さん、今日ね!」と話が始まるのは
うまくいった日のことが多いのですが、
たまに「今日、ちょっと泣いちゃった」と
開口一番に言ってくることがある。
外で泣いた日に、真っ先に私に話しかけてくれる。
その信頼が、「家は安心できる場所」だという
証拠なんだと思っています。
「安心の居場所」を育てるための4つの習慣
習慣1:帰ってきたときの「おかえり」を丁寧に言う
忙しくても、スマホを見ていても、
子どもが帰ってきた瞬間だけは顔を上げて「おかえり」と言う。
この一瞬が、「あなたが帰ってきたことを喜んでいる」という
メッセージになります。
習慣2:うまくいかなかった日は「聞かない」選択をする
子どもの様子がいつもと違うとき、
根掘り葉掘り聞くより「ゆっくりしていいよ」と言う。
「話したいときは聞くよ」という安心感が、
後から子どもが話しやすい空気をつくります。
習慣3:弱音を「受け取る」だけにする
「悔しかった」「泣いた」「うまくいかなかった」と
子どもが言ってきたとき、すぐにアドバイスしない。
「そっか」「それは大変だったね」と
気持ちをそのまま受け取るだけでいい。
解決は、子ども自身がする。
親の役割は「受け取ること」だけで十分な日もあります。
習慣4:「失敗しても帰れる場所」を言葉にする
たまに「何があっても家に帰ってきていいよ」と
言葉にして伝えてみる。
普段の「おかえり」に加えて、
この言葉が子どもの心の安全網になっていきます。
家が「安心の居場所」であること、それが子どもの土台
学校でうまくいかなかった日。
友達との間で何かあった日。
テストが思うようにできなかった日。
そういう日に、玄関を開けたら「おかえり」と言ってもらえる。
そのままでいていい空気がある。
アドラーが言う共同体感覚は、
この「安心の居場所」の積み重ねの中で育ちます。
特別なことをしなくていい。
ただ、帰ってきたことを受け取る「おかえり」を。
その一言が、子どもの明日を支えています。


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